JFMC22-9601 (特定研究22)

タイトル;在宅がん医療の合理的システムの開発に関する研究

集積期間;1996.1~1997.3

集積症例数;232症例

解析対象症例数;208症例

報告書提出:1998.9

結果;

  1. 用意された「在宅がん医療の合理的システムの研究」のためのアセスメント表の信頼性、実用性が予め確認された。
  2. Donabedianが提唱した医療の質の3要素、すなわちStructure(構造的要素)、Process(行為に関する要素)、Outcome(成果)について検討した。
    • 1)構造的要素に関して:
      • 在宅がん医療へ移行する症例は平均67歳、在宅移行時の症状は食欲不振、全身倦怠感、不眠症が大部分を占めていた。「病名告知あり」および「病状の理解あり」は高齢になるにつれて低下したが、「病名告知され理解している」例は在宅医療に対する意識も、また家族の介護意欲も強く、在宅がん医療への移行には「告知」が重要と思われた。
    • 2)行為に関する要素について:
      • (1)在宅期間4週以内症例のケア回数は、在宅が4週を超える症例のそれよりも有意に多かった。
      • (2)70歳未満症例のケア回数は70歳以上のそれより有意に多かった。
      • (3)70歳未満症例では在宅4週以内症例のケア回数が、在宅が4週を超える症例のそれよりも有意に多かった。
      • (4)満足度は70歳以上では経過に従って高くなる傾向があったが,70歳未満では6週以降に低下傾向を認めた。
      • このように70歳未満症例とそれ以上において、ケアの内容が異なっていた。
    • 3)成果
      • (1)70歳未満症例では、70歳以上症例に比べて不眠や不安を訴える例が有意に多かったので,70歳未満例ではサイコオンコロジーの専門家の協力が望ましいと思われた。
      • (2)在宅期間と在宅死との関連について:
        • 在宅症例の約4割が在宅死を迎え、その在宅期間は70歳未満で平均43.2日、70歳以上で平均58.8日だった。残りの症例は70歳未満では平均46.0日で再入院し、平均31.4日後に病院死、70歳以上は平均64.0日で再入院し、平均32.8日後に病院死した。
      • (3)在宅死の頻度は「病名告知」「本人・家族が在宅を希望した場合」「最後まで在宅の意思、介護意欲を示した場合」に有意に高かった。