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 日頃はがん集学的治療研究財団の活動へのご理解やご支援を賜り、誠にありがとうございます。

 最近配信されたNATIONAL GEOGRAPHICのニュースでは、若い世代の大腸がんの発生率が世界的に増えており、年長の世代より50歳未満の若い人のほうが大腸がん患者の増えるペースが速い国の一つとして日本が取り上げられました。

 日本人の2人に1人ががんに罹るとされる時代。当財団では、国民の皆さんの健康やがん患者さんのQOL向上を目指して、引き続き研究サポートとともに啓蒙活動を行ってまいります。

 今月のメールマガジンは、当財団の臓器別機能別研究班 胃がん班 班長の市川大輔先生によるコラムと、第22回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2025)で発表された山﨑健太郎先生からのメッセージをお届けします。ぜひ、最後までご覧ください。

 
 
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医療DXと生成AI時代における癌集学的治療の進化
臓器別機能別研究班 胃がん班 班長
市川大輔 先生
がん集学的治療研究財団 理事
山梨大学 医学部 外科学講座第一教室 教授
市川大輔先生

 近年、ディープラーニング技術を基盤としたAIの性能が飛躍的に向上しています。2022年にはOpenAI社から生成AIであるChatGPTが発表されましたが、瞬く間に世界中に広がってその利便性が認識されるとともに、医学部学生から提出されるレポートにはその利用がうかがえるものも多くあります。

 生成AIの基盤技術の詳細は他所に譲りますが、かつて考えられなかった規模のデータを学習し、自然言語処理技術による過去に学習した膨大な文脈の確率に基づいて単語や語の一部を「トークン」という単位で処理しながら文章を作成するため、学術領域では重要な文字数制限などには意外と弱いことも知られています。

 現在も大手企業からベンチャーまで、多くの企業が更なる精度の向上や画像生成技術の開発にしのぎを削っており、今後医療を含んだ更に多くの業界での導入が期待されています。一方で、超高齢化社会を迎えた日本において、医療分野におけるデジタル・トランスフォーメーション(医療DX)の推進は、本邦における今後の医療における社会保障制度の持続可能性と国民の健康寿命延伸の鍵を握る重要課題となっています。

 医療DXとは、疾病予防から診断・治療、介護に至る各段階で発生する膨大な情報を、標準化・共通化された基盤に集約し、保健・医療・介護の質を高めながら、業務効率化を図る社会変革です。この医療DXの中で三本柱の一つとして推進される「電子カルテ情報の標準化」では、各種ビッグデータの活用も期待されています。

 そのような中、近年免疫チェックポイント阻害剤併用化学療法の長期成績が幾つか報告され、本年のASCO-GIにおいては高度進行胃癌に対する免疫チェックポイント阻害剤併用療法の5年フォローアップ結果が報告されました。最短のフォローアップ期間が5年というこれまでに類を見ない報告ですが、6人に1人が5年生存を達成しており、今後のがん診療に大きなインパクトを与える結果でした。

 今後、集学的治療の重要性がさらに増すものと思われますが、医療DXによって標準化される膨大な医療データと進化するゲノム解析技術を背景に、生成AIを用いた新たな治療戦略が展開されることも期待されます。近い将来、レジメン設計や個別化治療の推進が展開されることも期待され、内科医、外科医、放射線科医に加えて「生成AI」という新たなパートナーを加えた未来の多職種連携によるがん集学的治療が、未来のがん医療を切り拓く力になると信じています。

 
 
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第22回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2025)ご報告
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 当財団所属の山﨑健太郎先生が、「再発危険因子を有するハイリスクStageⅡ結腸がん治癒切除例に対する術後補助化学療法としてのmFOLFOX6療法またはXELOX療法の至適投与期間に関するランダム化第Ⅲ相比較臨床試験」(研究課題名:JFMC48-1301-C4(ACHIIEVE-2 Trial))について発表されました。

JFMC48
内科系研究管理責任医師
プロトコル提案者

山﨑健太郎 先生
静岡県立静岡がんセンター 消化器内科
山﨑健太郎先生

<山﨑先生よりメッセージ>

 本試験は国際共同前向き統合解析である IDEA 研究の一試験と実施され(Iveson TJ, J ClinOncol 2021.)、主解析の結果はすでに報告されています(Yamazaki K. Ann Oncol 2021)。今回はASCO-GI2025で発表した7年フォローアップの最終追跡結果を多変量解析、サブグループ解析とともに報告しました。

 観察期間中央値93.9ヶ月における解析で、主要評価項目の7年無再発生存率(81.8% [6ヶ月群] vs. 83.4% [3ヶ月群]; HR 1.00 [95%CI 0.66-1.53])、および副次評価項目の7年生存率(88.8% [6ヶ月群] vs. 88.4% [3ヶ月群]; HR 1.16 [95%CI 0.70-1.93])とStage II 結腸直腸癌に対する術後補助オキサリプラチン併用療法の3ヶ月間投与は既存の6ヶ月間投与と比較して遜色のない治療成績でした。

 また、登録例の84%で選択されたCAPOX療法における解析でも同様の結果でした。本試験で規定した6つ再発リスク因子における多変量解析では、無再発生存期間、全生存期間ともにT因子、リンパ節検索個数12個未満が有意なリスク因子であることが示されました。

 安全性の解析については登録後96ヶ月時点における末梢性神経障害の頻度が6ヶ月群で有意に高いことが示され(24.9% [6ヶ月群] vs. 7.9% [3ヶ月群])、オキサリプラチン投与にともなう本有害事象が長期に遺残すること、3ヶ月投与の有用性を報告することができました。今後、本試験の最終追跡結果の論文化を予定しておりますので、引き続きご協力をお願いいたします。

 最後に、今回お忙しいなか本発表のご指導を承りました研究代表者の前原喜彦先生、大津敦先生、吉野孝之先生、ASCO-GI2025で発表をしていただいた須並英二先生、患者さん、研究参加施設の先生方、がん集学的治療研究財団(JFMC)、ヤクルト本社の皆さまに感謝申し上げます。

 
 
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金子正利
(がん集学的治療研究財団 事務局長)

金子局長

 JFMC48試験は2014年に始まり、約500例の集積に3年間、追跡に7年間を費やした、財団の中でも指折りの長期大規模試験です。

 山﨑健太郎先生、本当に長い間ありがとうございました。また、研究にご協力頂いた先生方、追跡データを収集した財団職員、資金面でのサポートを頂いたヤクルト本社様のお力添えのお陰で、この素晴らしい研究成果を世に出すことができたと考えております。

 市川先生からご寄稿を頂きましたように、医学の進歩は、最新のデジタル技術や分子生物学と結びついて新たなフェーズに入ったと思われます。当財団もその流れの中、本来の目的であります、【患者様に優しい治療法の確立】のため、昨年、臓器別機能別研究班(10の研究班)を立ち上げ、新たな治療法の研究を行っております。

 また、がん予防に関する啓発活動(セミナー・講演会・イベント)も実施し、国民の健康の向上に貢献したいと考えています。

 
 
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