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がん集学的治療研究財団です。

旧年中は、格別のご支援を賜り、誠にありがとうございました。 本年も当財団は、国民の健やかな毎日のサポートを目指し、がんの予防と治療、再生医療の研究に力を入れてまいります。 本年も、変わらぬご支援のほど、どうぞよろしくお願いいたします。

2025年最初のメールマガジンは、昨年発足した当財団の臓器別・機能別研究班より、乳がん班、がんと再生医療班の研究開始のご報告と、11月末に実施したWEBセミナーのレポートをお届けいたします。 ぜひ、最後までご覧くださいませ。
臓器別・機能別研究班より、乳がん班、がんと再生医療班の研究が開始!
がん集学的治療研究財団は、昨年に臓器別・機能別研究班を設立いたしました。具体的には、臓器別研究班として肺癌、乳癌、膵臓癌、食道癌、胃癌、大腸癌の各研究班を、機能別研究班として免疫、がんと再生医療、手術術式、医療機器の各研究班を設立し、それぞれの領域で研究実施に向けた取り組みを始めております。

今春からは、井本滋先生(当財団理事・杏林大学医学部教授)を班長とする乳癌研究班と、山岸久一先生(当財団理事長・京都府立医科大学元学長・名誉教授)を班長とするがんと再生医療研究班において、新研究がスタートしております。これは臓器別・機能別研究班を立ち上げたことによる産物です。

続いて、松原久裕先生(当財団理事・千葉大学医学部長)を班長とする食道研究班、市川大輔先生(当財団理事・山梨大学医学部教授)を班長とする胃癌研究班においては、研究テーマの検討など、具体的な活動に入っています。

肺癌に関しては池田徳彦先生(東京医科大学教授)、膵臓癌は山上裕機先生(昭和大学医学部教授)、大腸癌は小林宏寿先生(帝京大学医学部、溝口病院教授)、手術術式研究班は瀬戸泰之先生(国立がんセンター中央病院長)、免疫研究班は河野浩二先生(福島県立医科大学教授)、医療機器研究班は宇山一朗先生(藤田医科大学教授)にそれぞれ班長として、活動をしていただいております。

研究の進捗や発表については、当財団のプレスリリースやメールマガジンでご報告いたしますので、引き続き購読いただけますと幸いです。
 
 
再生医療WEBセミナー実施「認知症治療と法的対策」
山岸先生・松浦先生
2024年11月27日、『5人に1人が認知症の時代!再生医療と法的対策の最前線』と題したWEBセミナーを実施。本セミナーでは、当財団の理事長である山岸久一先生とシグマ麹町法律事務所の弁護士・松浦剛志先生を迎え、再生医療による最新の認知症治療法と驚異の治療成績について、また認知症患者の抱える問題点と解決のための法律的アプローチについて講演いただきました。本セミナーの内容について、以下にまとめます。

またがん集学財団の公式Youtubeにて、本セミナーのアーカイブ動画を公開していますので、ぜひご視聴ください。
がん集学財団公式Youtube
【講演1】認知症治療の新たな希望 再生医療の最前線
講演者:山岸 久一 先生(京都府立医科大学元学長・名誉教授/がん集学的治療研究財団 理事長)
山岸先生1
現行治療の限界と再生医療への期待
講厚生労働省の発表によると、2025年には高齢者の5人に1人が認知症になると言われており、大きな社会問題となっています。認知症のうち、アルツハイマー型認知症は約2/3を占めると言われていますが、治療方法は確立されていません。

現在、認知症治療薬として処方されているアセチルコリンエステラーゼ阻害薬や、最近ニュースでも取り上げられているレカネマブなどの治療薬は、認知症症状の進行を遅らせる効果はあるものの、認知症を治すことはできません。根本的な治療方法は確立されていないのです。こうした状況の中で、山岸先生は薬物以外の治療方法に着目しました。そして幹細胞を用いた再生医療により認知症の症状が改善することを発見したのです。
再生医療の可能性
山岸先生の報告によれば、脂肪組織由来幹細胞(ADSC)を用いた再生医療を14人の認知症患者に行い、その14人全員で、認知症の程度を計るMoCAJというスコアが改善したのです。更に、MoCAJで進行度が中等度以上と診断された12人のうち9人(75%)の認知機能が、健常値近くまたは健常状態にまで改善したとのことです。

本セミナーでは、治療前後の認知症患者の具体的な症状の変化を紹介しました(下記)。
山岸先生2
治療方法と安全性
治療方法について説明がありました。まず、患者の腹部から脂肪細胞を採取し、幹細胞を分離・培養した後、患者本人に点滴投与します。これがADSC治療の全てです。培養には6~8週間を要し、投与は月1回、計3~6回行われます。自分の細胞を投与するためiPS細胞の様に拒絶反応を考慮する必要はありません。ADSC治療は今までに82人(計468回)行われていますが、有害事象は血種が1例(1.2%)あるのみで安全な治療法とのことです。
ADSC治療 効果の理由
山岸先生は、脂肪組織由来幹細胞(ADSC)の治療効果を二つの側面から説明しました。一つはADSCの幹細胞としての特徴です。ADSCは神経系の他、循環器系など様々な組織に分化するとともに、病変部に自ら移動して集まると言われています。もう一つは、ADSCに様々な生体物質を分泌する力があることです。認知症の原因物質として、アミロイドβとタウ蛋白が有名ですが、山岸先生はこれらの原因物質を分解する酵素をADSCが分泌することを発見しました。これらの特性により、脳内の異常タンパク質が減少し、神経細胞が修復されて、認知症症状が改善するのではないかと考えられています。
山岸先生3
ALS・パーキンソン病への治療実績
ALSは全身の筋肉が弱くなり、数年で人工呼吸器に頼らざるを得なくなる病気です。原因不明で治療方法も確立していない難病です。しかしながら、ADSC治療では、症状改善例が54%(7/13)とのことでした。セミナーでは、治療後10年を経て、仕事をしているという症例も紹介されました。

パーキンソン病についての治療効果も紹介されました。この病気は脳内のドーパミンが減って運動障害や振るえなどが発現する病気で、根治的治療法が未確立な難病です。パーキンソン病患者9人に対し、それまで行っていた治療にADSC療法を追加して経過を確認したところ、89%(8/9人)に更なる症状の改善(UPDRS指標の改善)が見られました。
未来への展望
脂肪組織由来幹細胞治療(ADSC治療)は、認知症やALSなど、これまで治療が難しいとされていた疾病に対して治療効果を発揮する最先端の再生医療です。
山岸先生は、これらの成果を基に「認知症治療の夜明けを迎えつつある」と述べ、再生医療が社会に広がることで認知症治療の未来が大きく変わる可能性があると強調しました。
【講演2】認知症の再生医療と法的課題
講演者:松浦 剛志 先生(シグマ麹町法律事務所 弁護士)
意思能力の法的判断
意思能力とは、自己の権利や義務についてしっかり判断できる能力であり、財産管理、契約、相続、遺言、事業の継続等の場面において重要な能力とされています。ただ、認知症患者においては意思能力が低下しており、上記の場面では係争が起こる可能性があります。

松浦先生は、係争時に意思能力を判断するのは裁判官であり、医師の診断だけでなく、様々な情報を総合的に考慮して判断していると説明しました。また意思能力が認められた例、認められなかった例に分けて、具体的な係争内容と裁判官の判断のポイントについて解説しました。
松浦先生1
医療同意の課題
再生医療の治療を受ける際、認知症患者の同意能力が問題となる場合があります。軽度の患者であれば本人の意思が最優先されますが、同意能力に問題のある場合、法律上の決まりはありません。実務的には家族の同意が重要になります。

成年後見人には医療同意に関する権限はありませんが、家族の意見が分かれる場合では重要な役割を果たすことになります。そして、今後はさらなる法的整備が必要とされていると聴講者に伝えました。
松浦先生2
成年後見制度の改正
2019年の民法改正により、成年後見制度は本人の意思を尊重する仕組みへと進化しました。これにより、代理中心から意思決定支援型への移行が進み、後見人の権限も必要最小限に抑えられるようになりました。

松浦先生は、認知症が回復可能な病気と認識されることで、自身で後見人を選択できる後見制度(任意後見制度)の利用が増える可能性に言及しました。
松浦先生3
法制度の未来と医療技術の連携
松浦先生は講演の最後に、医療技術の進歩と法制度の整備が連携することで、認知症患者の尊厳や自己決定権を守る社会の実現が可能になると強調しました。

また、再生医療の進展が法的課題にも変化をもたらし、新しい制度設計が求められる時代が到来すると述べました。
再生医療WEBセミナーを終えて
金子正利
(がん集学的治療研究財団 事務局長)

金子局長
昨年11月、山岸理事長とともに、当財団として初めての認知症に焦点を当てた再生医療WEBセミナーを開催いたしました。 当財団は公益財団法人として、国民の健康維持、向上に貢献することを使命としております。

今や国民病とも言われる認知症。苦しむ患者さんとそのご家族、関わる方々を救済すべく、認知症治療の1つの選択肢として再生医療による治療法の可能性を知っていただくことを目的に、今回のWEBセミナーを企画・実施いたしました。今回は弁護士の松浦先生をお招きし、再生医療を受けるにあたり重要である医療同意についても解説いただきました。

本セミナーでは現在研究中の治療法を対外的に情報を発信しました。再生医療による認知症の治療法について感銘を受けられた方から、ご寄付のお申し出をいただいております。

当財団としては、がんの予防と治療法の研究に加え、認知症をはじめとする難病で苦しむ方、その周りの方々の救済を視野に入れて、公益事業を推進してゆく所存であります。その一環として、今回のようなWEBセミナーや2023年に実施したがんフェアのような啓蒙・広報活動にも取り組んでいきたい考えです。

今回のセミナーをご視聴くださった皆様、お力添えいただいた皆様、誠にありがとうございました。
 
 
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