(公財)がん集学的治療研究財団 メールマガジン「JFMCからのメッセージ」 vol.23
 
今月のコラム
 
小寺 泰弘 氏

がん集学的治療研究財団
評議員
名古屋大学大学院
医学系研究科
教授 小寺 泰弘

財団と個別化医療

癌治療における外科的切除の位置づけは「固形癌を治せる唯一の治療手段」から「集学的治療の中の重要な一項目」となり、少々ランクを落とした感がある。集学的治療の中で外科的切除がどこまで重要な項目であるかは、癌種や臨床病期にもよるだろう。例えば切除可能なStage II/IIIの進行胃癌を手術と術後補助化学療法で治すというのであれば、主役は依然として手術である。しかし近年、本来であれば手術適応がない転移性癌が転移巣に薬物療法が顕著に効いたために手術に至るケースが散見され、conversion surgeryという概念が生まれた。この場合は薬物療法のおかげで外科医にも仕事が回ってくるのであり、今やそうして切除した標本に結果的に癌の遺残がなく、その手術が不要であった可能性が否定できないようなケースすらある。このような場合、外科的切除は最早主役ではないのかもしれない。近年、外科手術手技そのものは極限まで磨き上げられ、「技術が足りないから切除できない」症例の比率は下がった。「同じことをより低侵襲に行う」という方面にはさらなる進歩の余地があろうが、そこに長期予後の飛躍的な改善まで求めるのは酷と言うものであろう。そういうわけで、癌治療のさらなる飛躍を担う立場からは、外科医ではあっても、集学的治療の中の外科的手技以外のコンポーネントの開発に力を注ぐ必要が、これまで以上にあるのかもしれない。
ここからは極めて個人的な内容になり恐縮だが、そもそも私がこの「集学的治療」という言葉を初めて知ったのが「がん集学的治療研究財団」であった。私が大学に帰局した時に財団の特定研究16というin vitroの制癌剤感受性試験を検証する全国規模の臨床研究が行われており、研究代表者は私の3代前の名古屋大学第二外科(当時)教授である故近藤達平先生であった。この研究の学内の実務担当者に指名されたのと時を同じくして私は愛知県がんセンターへ異動することになり、近藤先生が少し寂しそうな表情で「なんだ、君、やめちゃうのか」とおっしゃったのが思い出される。この研究の流れはその後慶應義塾大学の故久保田哲郎先生に引き継がれてJACCRO-GC04 studyとして結実し、財団の現会長であらせられる北島政樹先生の強力な後押しで感受性試験が保険適応となるにいたった。その後さらに時間が経過したが、近藤先生や久保田先生が追及された個別化医療の精神はゲノム医療の形で脈々と引き継がれている。
適切に選択された薬物療法が手術と主役の座を争う時代となりつつある中、財団が行う集学的治療の研究やその結果としてのbig dataの解析にはさらに大きな期待が寄せられている。そのお手伝いができるのは近藤先生の後輩として望外の幸せであるが、そのためにも、辛く厳しい世の中ではあるが、製薬会社をはじめとする企業の方々からのさらなる御支援を願ってやまない。

 
   
平成30年度 第39回一般研究助成応募開始いたしました!(8月31日締切)

会場風景

毎年恒例の、一般研究助成の応募が開始されております。
がんの集学的治療に関する研究を一般から募集し、審査の上、当財団より助成金を差し上げています。
一般研究に採択された研究テーマが発展して、財団の多施設共同研究(JFMC研究)として実施されることもあります。
本年8月31日迄となりますので、皆様のご応募を、お待ちしております。

詳細についてはこちらからご覧ください

 
ESMO-GI 2018

ESMO-GI 2018

去る6月23日に、スペインのバルセロナにおいて開催されたESMO-GI2018にて、ACHIEVE試験の長期フォローアップデータについて、手稲渓仁会病院外科 武内 慎太郎 先生がご発表されました。

詳細についてはこちらからご覧ください



職員研修による職員不在のお知らせ

がん集学的治療研究財団事務局は 8月13日(月) ~ 8月15日(水) の3日間は誠に勝手ながら職員研修の為、職員が不在 となります。

※JFMC49-1601-C5に関しましては通常通りの業務を行っております。

期間中は大変ご不便をおかけいたしますが、何卒ご了承くださいますようお願い申し上げます。

 
当財団の症例集積状況
 
  JFMC49-1601-C5  症例集積中です!
      食道癌患者へのDCF療法時における成分栄養剤の口腔粘膜炎抑制作用の検討
      −エレンタール©非投与群を対照群としたランダム化第Ⅲ相比較臨床試験(EPOC2 study)−
 
詳細をみる
 
  JFMC51-1702-C7  症例集積中です!
      標準化学療法に不応・不耐の切除不能進行・再発大腸癌に対するTFTD(ロンサーフ©)
      +Bevacizumab併用療法のRAS遺伝子変異有無別の有効性と安全性を確認する第Ⅱ相試験

 
詳細をみる
 

      ★今まで行われた当財団の臨床試験一覧についてはこちらから(詳細がPDFでご覧いただけます)

 
 
寄付支援のお願い
 
本財団ではQOL(Quality of life)を最優先にした「患者に優しい治療法」を確立するために臨床試験をおこなうことを主な使命とし、今後のがん患者さんの福音のために、その役割を果たしていく所存です。そのためには、皆様からのご支援、ご援助、ご理解が必要であります。
 
詳細をみる
 
感謝を込めて
 
ご協力を頂きました企業様には、ご支援のお礼を兼ねて各企業様のロゴマークを当財団の季刊誌であります、「がん集学財団ニューズ」や刊行物、ホームページに掲載させて頂き、御社のロゴマークから御社のホームページにリンクを貼らせて頂きます。
ご興味のある企業様はこちらから、下記メールアドレスまでお問い合わせください。          
 
 
お問い合わせ先・その他
本メールマガジンは、当財団の臨床試験にご参加頂いているご施設の先生方、役員、委員、寄附・賛助会員の皆様へ配信をしておりますが、(1カ月に1回程度の配信予定)お知り合いの方々にもご転送を頂きましてより多くの皆様に、当財団の活動をご覧頂けますと幸いです。

・新規メールマガジン登録・配信先メールアドレスの変更は、こちらから
・当財団のプライバシーポリシーはこちらから
・メールマガジンバックナンバーはこちらから

※配信停止を希望される場合は、こちらから

発行元:公益財団法人 がん集学的治療研究財団
〒136-0071東京都江東区亀戸1-28-6タニビル3F
TEL:03-5627-7593 / FAX:03-5627-7595
E-mail: merumaga@jfmc.or.jp
HP: http://www.jfmc.or.jp/
Copyright © 公益財団法人 がん集学的治療研究財団 All Rights Reserved.