(公財)がん集学的治療研究財団 メールマガジン「JFMCからのメッセージ」 vol.22
 
今月のコラム
 
掛地 吉弘 氏

がん集学的治療研究財団
評議員
神戸大学大学院
医学研究科外科学講座
食道胃腸外科学
教授 掛地 吉弘

Precision medicine

 毎年、6月の初めにAmerican Society for Clinical Oncology (ASCO)のannual meetingが開かれる。最近は開催地がシカゴに固定されて、世界中から4万人近い参加者が集まる活況を呈している。会長であるDana-Farber Cancer InstituteのBruce E Johnsonが選んだ今年のテーマは”Delivering Discoveries: Expanding the Reach of Precision Medicine”。がん病態の分子機序が明らかになり、標的分子を治療に応用して効果性が増せば、恩恵を受ける患者さんも増えていく。臨床試験の結果から推奨される治療法を試しても、個人によってその効果には差が出る。治療効果が期待できるresponderを特定し、治療成績を上げる一方で、治療効果が期待できないnon-responderには有害事象のみで益の無い無駄な治療を避けることができる。従来からresponderとnon-responderを見分けるbiomarkerの探索はされてきたが、precision medicineにおいてはより大規模にあらゆるゲノムを調べて、標的分子に対する治療を施そうとしている。癌細胞にtoxicで正常細胞にnon-toxicな分子を見つけるために、癌と正常組織の両者をsamplingする。DNAのみならず、RNAも調べるtranscriptomicsも必須である。ゲノムは原則として同一個体内の全ての細胞で同一だが、mRNAないしは一次転写産物の総体であるtranscriptomeでは状況が異なり、同一の個体にあっても組織ごとに、あるいは細胞外からの影響に呼応して固有の構成をとる。癌細胞にtoxicで正常細胞にnon-toxicな治療を施せば、素晴らしい治療効果が期待できる。米国では何十万人という数をscreeningしてきており、precision medicineの恩恵を受ける人の割合は10年前の7,000人(1%)ほどから最近は40,000人(6%)程度に、確実に増えている。
 わが国では2013年に、国立がん研究センター東病院をはじめ、約250の病院と16社の製薬会社による、日本初の産学連携全国がんゲノムスクリーニングプロジェクト「SCRUM-Japan」が始められた。進行した肺がん、大腸がんなどを中心に、がん細胞の遺伝子変異を分析し、もっとも効果が期待できる薬の投与を行う。第一期プロジェクトでは4800症例が登録され、約3分の1の患者に薬が効く可能性がある遺伝子変異が見つかり、約150人が分子標的治療薬の医師主導治験や企業治験に参加している。
一方で、第3期がん対策推進基本計画に基づき、「がんゲノム医療中核拠点病院」の整備が進んでいる。厚生労働省の検討会は、がん患者のゲノム(全遺伝情報)を調べて最適な治療薬を選ぶ「がんゲノム医療」を中心となって提供する中核拠点病院を11カ所決めた。中核病院と連携する病院も132カ所定めて、医療体制を整備していく。
 precision medicineは着実な拡がりをみせているが、恩恵を受ける人の割合は未だ一部である。目の前の臨床的な課題に対してより良い治療を確立していくために、様々ながんの臨床試験から得られる有用な情報を積み重ねていきたい。

 
   
第6回評議員会が開催されました
会場風景1
 
会場風景2
平成30年6月21日(木)に当財団の第6回評議員会が開催されました。
本評議員会では下記の審議事項及び報告が行われました。
今回の評議員会では、現在検討している医療機器事業等、今後、幅広い活動が行えるよう定款の一部変更も承認されました。

【審議事項】:
第一号議案:平成29年度事業報告並びに決算に関する件
第二号議案:定款一部変更の件
第三号議案:その他


【報告事項】:
1.平成30年度事業計画並びに収支予算について
2.JFMCデータベース事業の進捗状況について
3.平成30年度一般研究助成事業について
4.医療機器委員会について
5.がん集学的治療研究財団 給与規定変更について
6.役員等の旅費等支給方法について
7.臨床研究法の施行について
8.がん撲滅サミット2018共催依頼について
9.今後の会議日程について
10.その他

 

★過去の評議員会議事録についてはこちらからご覧ください
 
財団ニューズVol.41を製作中です!

財団ニューズ

このたび、当財団のシンボルマークを基にピンバッジを新たに作成いたしました。
患者様に優しい効率的ながん治療探求のために、これからも皆様と想いをひとつにして取り組んで参りたいと考えております。
「人に優しいがん治療」を胸に今後ともご支援のほど、どうぞよろしくお願い申し上げます。
当財団の関係者の皆様に配布させて頂きます

財団ニューズVol.41を製作中です!

財団ニューズ

ただ今、財団ニューズVol.42発刊に向けて、記事を作成中です。多くの関係者である先生方からの声や、当財団の活動内容など幅広く掲載させて頂く予定ですので、もう暫らくお待ちください。

過去の財団ニューズは電子版にてこちらからご高覧いただけます。

 
 
 
当財団の症例集積状況
 
  JFMC49-1601-C5  症例集積中です!
      食道癌患者へのDCF療法時における成分栄養剤の口腔粘膜炎抑制作用の検討
      −エレンタール©非投与群を対照群としたランダム化第Ⅲ相比較臨床試験(EPOC2 study)−
 
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  JFMC51-1702-C7  症例集積中です!
      標準化学療法に不応・不耐の切除不能進行・再発大腸癌に対するTFTD(ロンサーフ©)
      +Bevacizumab併用療法のRAS遺伝子変異有無別の有効性と安全性を確認する第Ⅱ相試験

 
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      ★今まで行われた当財団の臨床試験一覧についてはこちらから(詳細がPDFでご覧いただけます)

 
 
寄付支援のお願い
 
本財団ではQOL(Quality of life)を最優先にした「患者に優しい治療法」を確立するために臨床試験をおこなうことを主な使命とし、今後のがん患者さんの福音のために、その役割を果たしていく所存です。そのためには、皆様からのご支援、ご援助、ご理解が必要であります。
 
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感謝を込めて
 
ご協力を頂きました企業様には、ご支援のお礼を兼ねて各企業様のロゴマークを当財団の季刊誌であります、「がん集学財団ニューズ」や刊行物、ホームページに掲載させて頂き、御社のロゴマークから御社のホームページにリンクを貼らせて頂きます。
ご興味のある企業様はこちらから、下記メールアドレスまでお問い合わせください。          
 
 
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