事務局長就任のご挨拶

 私、金子正利は、過日開催されました公益財団法人がん集学的治療研究財団の理事会で、古田榮敬前事務局長の後任としてご指名を受け、本年4月1日より就任させて頂きましたので、一言ご挨拶申し上げます。もとより若輩・未熟で、経験も浅く、身に余る重責ですが、本財団の発展、繁栄のため粉骨努力する所存でございますので、ご支援、ご指導、ご鞭撻を賜りますよう、宜しくお願い申し上げます。

 ところで、私は、平成11年に本財団に入職させて頂き、以降19年間、がん薬物療法を中心とした臨床試験等の財団事業に参画させて頂きました。個人的には、当時父をがんで亡くした時期と重なり、当財団への入職にも不思議な縁を感じ、精魂努力できたのではないかと思っております。入職後、総務課担当職員として理事会や委員会運営に参画してまいりました。その頃、当財団は厚生労働省医政局所管の法人で、決算及び予算等は全て厚生労働省医政局への報告義務があり、何度か同省へ訪問させて頂きました。即ち、財団事務局長の多くは、厚生労働省退職役人の就任ポストとして常套化しており、母校訪問的雰囲気がありました。これが、ディオバン不正事件後の倫理規制強化で、寄付金収入が激減し、自主的臨床試験が禁止され、財政面で大変厳しい状況になり、存続の危機状態が続いています。この背景から、事務経費削減が課題となり、役人経験者を高額で事務局長に迎えることが不可能となり、止む無く事務内容に精通した現職員を事務局長に昇格させた方が、職員の意欲向上の面からも有利との力学的要素が働き、総務課長の私が、事務局長に推薦たれたものと考えています。しかし、この経緯は、当財団として初めての試みで、前例はなく、責務の重さに身が引き締まる思いでありますが、全職員が友達関係にありますので、新しい財団運営・活動に夢を持って対処できるのでは期待し、粉骨努力する価値が高いと考えておりますので、宜しくお願い申し上げます。

 さて、私が入職以降今日まで体験し、学んできました内容を回顧しますと、①入職当時の理事長は、九州大学名誉教授井口 潔先生で、まさに経済不況下で、銀行倒産が頻発し、各製薬企業から財団への寄付金回避現象が続出し、財政状況が大幅に悪化し、臨床試験の実施・継続が困難な状況にありました。そこで、当時の事務局長は、財団運営を苦慮し何度か厚生労働省を訪問し助言、指導を仰いでおられたと記憶しています。その中で、一時的逃避策として厚生労働省の暗示(?)もあり、運営資金である基金の一部取り崩策が試みられました。しかし、これが結果的に厚生労働省の逆鱗に触れ、早急な基金返却か財団廃止論が囁かれ、まさに崩壊寸前状態にありました。②その後、2002年より現理事長、佐治重豊岐阜大学教授が就任され、翌年に「患者に優しい効率的ながん薬物療法、プロジェクトX」を起案されました。幸い、このプロジェクトXは、「がん集学的治療法」の実践策として多くの患者さんから歓迎され、以降、当財団の基本方針として定着し、発展し、多くの臨床試験を展開できる様になりました。③一方、財団事業の一環として毎年、抗がん剤の製造・販売を取り扱う製薬企業を対象に、「企業懇談会」を開催しました。即ち、多剤併用を旨とする癌薬物療法の効果的な展開のためには、複数の製薬企業との共同研究が必要で、異なる企業間の薬剤を用いた「自主的臨床試験」を追行する方策として有効活用できました。④大規模臨床試験と委受託試験への取り組みについて。自主的臨床試験の展開により各製薬企業からの寄付金が増加し、財務基盤が好転し、小・中規模臨床試験から、1,000例を超える大規模臨床試験が数多く企画・実施され、事務局職員数も増加し、EDCシステムの導入で、登録症例数が飛躍的に増加し、多国間臨床試験も可能になりました。その結果、2012年までに47研究課題を計画し、参加施設数も延べ1,913病院、登録症例数は延べ10,921例と増加し、正に財団の黄金時代を迎えておりました。
 一方、国から補助金事業についても、④古田榮敬前事務局長の就任で、厚生労働省とのパイプが強化され、第3次対がん10か年総合戦略の一環として、平成18年から厚生労働科学研究費補助金事業としての「がん臨床研究推進事業;がんの効果的かつ効率的な予防、診断、治療等を確立するため、質の高い臨床研究並びに全国的に質の高いがん医療の均てん化に資するための臨床研究推進目的でa)外国人研究者の招へい事業、b)外国への日本人研究者派遣事業、c)若手研究者育成活用事業、d)研究支援者活用事業、等をお世話させて頂きました。本事業は平成23年まで続きましたが、その後、公益財団法人がん研究振興財団に引き継がれました。⑤また、平成20年から厚生労働省の要請で「がん医療の均てん化を図るために開始されたインターネットを活用した専門医の育成等事業」が企画され、二次医療圏におけるがん医療の均てん化を図る目的で、a)がん医療に専門的に携わる医師に対し、インターネット上での技能習得を可能とする環境構築、b)がん診療連携拠点病院で行われている緩和ケア及び相談支援センターにおける相談業務内容について必要な指導等を行う事業を3年間お手伝いし、以降、日本癌治療学会に引き継がれました。
 幸い、これら国の事業のお手伝いのお蔭で、内閣府所管の公益財団法人への移行がスムーズに行われ、「公益性の高い事業を展開している財団」としての知名度が向上しておりました。
 ところが、ディオバン不正事件が発覚し、倫理規制強化で製薬企業からの寄付金の激減、自主的臨床試験の禁止、医師主導臨床試験は委受託試験でのみ許され、製薬企業と当財団との契約事業で、臨床試験実施時の責任、損害負担等について複雑な取り決めが必要となり、従来の形態での臨床試験実施が困難になり、財団の責任がより重くなりました。この様な、不安定な時期での事務局長就任ですが、責任の重さを強く感じ、財団運営では、会長、理事長、理事、監事、評議員はじめ事務局職員との協力が不可欠と考えています。
 以上、この度の事務局長就任にあたり、財団の歴史を振り返り、正に財団存亡の危機状態の中で、如何ほどの活躍ができるか、誠に不安ではございますが、多くの先生方、臨床試験関連企業、施設データーマネージャーの皆様、等々のご支援、ご協力を頂いて、粉骨努力する所存ですので、何卒宜しくお願い申し上げます。
 平成29年4月

kaneko
公益財団がん集学的治療研究財団
事務局長 金 子 正 利