臨床試験の実施体制

公益財団法人がん集学的治療研究財団ではわが国の臨床試験の質の向上を図る方策の一つとして「臨床試験参加の施設に症例毎の治療状況を把握し、治療計画の進行を管理する施設スーパーヴァイジング・ドクター(施設データマネージャー)をおき、研究事務局からの定期的交信に適切に対応するとともに、試験の進行に伴って生ずる正確な情報を掌握する仕組み」を臨床試験コーディネーティング・システム(以下、P.C.S.と略す)として提唱しています。

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施設スーパーヴァイジング・ドクターはその施設における実質的な研究責任者であり、日本癌治療学会の「臨床試験登録医」が望ましいです。施設データマネージャーは医師以外の医療従事者の中から適任者を指名してもらっています。

  • P.C.S.の特色はreal timeに情報を把握することです。これによって、
    1. 治療の進行状況に合わせて適切な指示を出し、コンプライアンスの向上を図ることができる。
    2. 各種症例報告書の内容をそれまでの交信データと照合、チェックしてその精度をあげることができる。
    3. さらに追跡期間中の症例について、とくに再発の疑いが起こったときには交信頻度を多くして再発確認の情報を正確に把握し、無再発期間の評価精度を向上させること等が可能となる。

    などが、1993年以降のP.C.S.の経験で明らかになりました。

わが国の臨床試験の実態は従来、どちらかというと企業責任型で進んできており企業に於いてはそれなりのシステムが運用されているようですが、参加施設の臨床試験に対する自主的な体制は全般的に見ると必ずしも明確でなく、欧米のシステムの到来に期待しながら他力本願的に経過しているような感があります。

われわれは自主的臨床試験の精度向上を決意し、従来のretrospective surveyを排してreal timeの情報を把握するように努め、それを実践した結果、見るべき成果が得られたというこの事実、特にわが国の臨床試験のシステム作りの突破口を開くために率先してその業務にあたられた施設スーパーヴァイジング・ドクターおよび施設データマネージャーの献身的努力は高く評価されるべきものと考えています。今後は中央事務局と各施設との有機的連繋を保つこのP.C.S.の普及を切望するものです。

P.C.S.の考え方は「日本癌治療学会臨床試験実施ガイドライン」第1版(1997年1月)に収録されています。